職権打刻とは?

稀に見かける職権打刻車、そもそも職権打刻とは何なのか?
どの様な場合に職権打刻が行われるのかご存知でしょうか?
こちらでは並行輸入登録にも(たまーに)関わる職権打刻に関してご説明します

職権打刻

運輸支局の説明としては
自動車の車体番号や原動機型式が腐食などで識別が困難になった場合は、職権による打刻が必要となります
と記載されています
所謂、汚損などが該当します
こちらは現在の打刻が辛うじて読み取り可能な場合などに利用が可能です

打刻が非常に読み取り辛いKZ900です
正規打刻ですが0や8が風前の灯火です
梅雨は越せそうにありません

また以前の制度では
型式不明として登録される輸入車など、ごく少数のみが販売される車両
も職権打刻の対象となります
こちらはどの時期まで上記の制度が適応されていたのか、そもそもごく少数とは何台程度なのかは不明です
また同車種の場合でも全てが職権打刻の対象となった訳では無いようで
正規打刻と職権打刻が混在してしまっているのが現状です

現在の並行輸入登録では型式が不明の車両を登録する際も
正規打刻を車体番号として登録が可能です

職権打刻の例

こちらでは過去所有していた車両で職権打刻が施された車両を例に、実際の打刻例を紹介します

打刻例

比較的以前の方法で行われた職権打刻例です
写真はGSX-R1100のエンジンです
旧打刻を✕印で上書き後、クランクケースに直接打刻が行われています

恐らくですが正規打刻が読み取り辛い状態になった為
職権打刻が行われたもとの推察しています

現在の打刻方法は直接打刻を行うのでは無く
プレート貼り付けに変更となっています

こちらはかなり以前の方法で行われた職権打刻例です
正規打刻が鮮明に残っていますが、職権打刻が行われています
車両はMoto guzziのCX100で、
車検証上の型式は「不明」となっていました
また正規打刻自体は特に上書きされる事無く
鮮明に読み取りが可能です

書類上から80年代前半に並行輸入車両として
登録が行われています
ちなみに車名はモトグッツィの記載になっており
製造者不明の為の職権打刻ではありません

「打刻が怪しい為、職権打刻になるかもしれません」って本当?

こちらの記事、実はこの文言への注意喚起として作成しました
オークションサイトやフリマサイト等で出品されている車両で
打刻が正規か不明の為、登録の際は職権打刻になるかもしれません
などの文言が記載されているのを見かけた事がありませんか?

この様な文面が記載された車両は十中八九、不正打刻の並行輸入車か
何か怪しい雰囲気の漂うCBX、CBR辺りです
そのまま読み取ると職権打刻を行う事で問題なく登録可能である様に思えます
中にはご丁寧に
並行輸入車は不正打刻であっても通関証明書の番号と合致していれば登録可能
という怪しい文章が添えられている出品も見受けられます
果たして記載の通り、職権打刻を行うことで登録は可能なのでしょうか?


結論から申し上げますと、不正打刻が疑われる場合は登録はほぼ不可能です
こちらは並行輸入の場合も同様です
陸運局等にはメーカーから打刻の文字の届出が行われています
要は陸運局はメーカーごとの打刻のフォントデータを所持しているという事ですね
つまり不正打刻は一目瞭然で弾かれてしまいます
また不穏事例は他管轄の陸運局とも共有されますので、一度不正打刻の疑いをかけられてしまうと全国どちらの陸運局に持ち込もうとその車両は登録を行う事は出来ません

仮に不正打刻の番号を車体番号とする通関証明書をお持ちの場合も登録は出来ません
並行輸入の申請、石刷り提出が通ってしまった場合も実車検査で弾かれてしまいます

陸運局側からするとその車両が
・不正打刻状態で国内に入ってきた車両なのか
・通関証明書の番号に合わせて国内で不正打刻を行った車両なのか
が不明の為、当然の措置ではあります

では不正打刻車両に職権打刻を行う事は可能なのでしょうか?
こちらも残念ながら不可能です
基本的には不正打刻が疑わる車両に関しては下記の例以外は
各種手続き自体が門前払いとなります
唯一の例といたしまして盗難にあった車両が打刻を削られて返って来た際などに
各種手続きを行い、自身が所有していた車両と証明を行う事が出来ると
職権打刻を行う事で再登録が可能です

不正打刻の見分け方ってあるの?

ここまでの解説で不正打刻車の登録がほぼ絶望的なのはご理解頂けたかと思います
ではその怖い怖い不正打刻を見分ける方法などはあるのでしょうか?

明らかにメーカーのフォントと異なる
当然ではありますがハンドメイド感が溢れる打刻は不正打刻です
また陸運局にはメーカーより先述の打刻例の届出があります
一見、正規の打刻と思われる物でも不正打刻と判断される場合もありますので
ご注意ください
中には過去に登録が行われ数回の継続車検を経てきたものの、いきなり不正打刻と認定され
以降の登録が不可能となる例も見受けられます

文字ごとの間隔、上下の高さが揃っていない
見分ける方法の一例として定着はしているのですが、旧車に詳しい方であれば既にご存知でしょう
古い車両の場合は正規打刻でも多少のバラつきがあります
古いスズキ車、マッハ以前のカワサキ車であれば顕著です
また職権打刻の例として掲載しましたモトグッツィも、上下の振れ幅は大きいですね
80年代以降でスタンプの様な物を使用し打刻を行う様になった後の車両は
文字間の間隔(打刻ピッチ)は有力な判断基準となります
これらは一定の判断基準にはなりますが、こちらのみで不正打刻と言い切るのは難しいのが実状です

公開はされていない判断基準
この項目で紹介したかった項目です
上記2点以外に陸運局は何らかの判断基準を有しています
ですがそちらを公開する事自体、不正打刻を行う際の対策となってしまいますので
明確な基準などは公開されていません
不正打刻車を検査に持ち込んだ際も、「不正と判断」という結果だけが示され
理由などは教えて貰えません
稀にオークションなどにメーカーの打刻ポンチが出品されているのを見かけますが
この様な物を持ってしても登録時はキッチリ弾かれる事が容易に想像できます

また1度不正打刻の判定を受けた車両は陸運局間で情報が共有されますので
別の県に持ち込んで登録なども不可能となります

結論:不正打刻車両には手を出さないのが◯

当たり前の結論となってしまいますが、不正打刻車に手を出すこと自体が
大きなリスクを孕む行為と言えます
特に高価な旧車等で盗難に合う機会の多い車種などは、怪しい打刻の物も非常に多いです
可能であれば手を出さないのが一番です

ちなみに過去、私が見かけた不正打刻車で一番パンチが効いていた物は
CBR400FにGB250の打刻を彫刻刀?で雑に彫り
軽二輪の書類付きとして販売されていた車両です
しかも売れていました
江戸時代なら額に犬の打刻を彫られる様な行為ですね