オークション等の個人売買を見ていると
「ゼファー400(軽二輪登録)」
「RZ250(腰上350cc)」
など、何となくグレーな車両を見かけませんか?



調べるまでもなく山程あります
中にはご丁寧に
「元に戻す事も可能ですが当方は詳しくありませんので、陸運局等に聞いて下さい」
などという文言が添えられている事も
本当でしょうか?
そもそもその様な車両を使用する事、また軽二輪として登録する事に違法性は無いのでしょうか?
こちらでは並行輸入登録にも少し関わる250cc登録に関してご紹介します
結論から申し上げると一部を除きグレーではありません。真っ黒です
ペンタブラックです
尚、当ページでは便宜上一般的な呼称に従い、
軽二輪を250cc、小型二輪を400ccと記載させて頂きます
よく分からなければ250ccをバリオス、400ccをゼファーと読み替えてください
そもそも250cc以上と未満で登録はどう違うの?
| 区分(道路運送車両法) | 必要免許 | 登録窓口 | |
| ~50cc | 第一種原付 | 原動機付自転車免許 | 市役所の窓口等 |
| 51cc~125cc | 第二種原付 | 小型二輪免許 | 市役所の窓口等 |
| 126cc~250cc | 軽二輪 | 普通二輪免許 | 運輸支局等 |
| 251cc~400cc | 小型二輪 | 普通二輪免許 | 運輸支局等 |
| 401cc~ | 小型二輪 | 大型二輪免許 | 運輸支局等 |
簡単な表を用意してみました
こちらを見ると~250cc(軽二輪)も250cc~(小型二輪)も登録窓口は同じ運輸支局になっていますので、登録に関しても同様のように思えます
しかし令和元年7月まで軽二輪は軽自動車協会が登録窓口となっていました
現在、窓口は同じですが道路運送車両法により区分が異なりますので、内部での取り扱い方法に様々な違いがあります
その最たる物がこちら

126cc~250ccのナンバープレート

251cc~のナンバープレート
ナンバープレートが実は異なります
小型二輪は枠が緑色となります
ですので慣れた警察官からすれば一目で登録状態が分かってしまう訳です
400ccバイクの250cc登録って違法なの?乗るだけなら大丈夫?
今回の記事で一番大切な点です
結論から申し上げると正規の方法で登録を行うのなら合法です
ただし実際の車両は400ccにも関わらず、250cc登録を行う事は違法です
また上記の様な車両を使用し公道を走行する事も違法となります
こちらの正規の方法とは運輸支局等に提出を行う資料の内容に従い
エンジンを載せ替える等の方法で正しく軽二輪の基準を満たす車両を登録し
使用することは問題ありません
ですが一般によく見られる400cc車両の書類上だけ250ccとして
登録を行う事は違法となります
またこちらを登録する事、使用する事はそれぞれ別の法律で刑罰が定められており
前者は「公正証書原本不実記載罪、同行使」
後者は「道路車両運送法違反」に該当する可能性があります
前者は5年以下の懲役または50万円以下の罰、後者は無車検車での公道走行に該当する場合6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金が課せられる場合があります
刑罰の重さもさることながら、実際に400cc車両を軽二輪登録で販売していたバイク屋が
逮捕された事例があります
摘発の難しさから簡単に考えられやすい不正登録ですが、想像以上に厳しい罰が課せられる上
上記は刑事罰のみの紹介ですので、この他行政罰として免許の減点もあります
更には無資格者が報酬を得ての書類作成及び提出代行は行政書士法に抵触します
更に更に税制も異なりますので場合によっては脱税の可能性まであります
知らなかった、この状態で譲り受けただけ、は一切通用しませんので、不正登録状態の車両を使用するのは止めましよう
道理上は勿論、刑罰等を鑑みると到底割に合う行為ではありません
ちなみに保険が下りるのかという話に関しては保険会社により対応は異なりますが
当然、厳しい判断が下される事が予想されます
なぜ違法な軽二輪登録が横行しているの?
違法状態な軽二輪登録として主に考えらるのは以下の3通りです
①並行輸入車などで輸入新規登録時に本来の排気量と異なる軽二輪区分で登録された場合
→車検を避ける為、タイトルが存在せず年式証明が出来ない、通関証明書が無い、など
理由は様々ですが現在でも多数の不正登録状態の車両が存在しています
②軽二輪車に改造を行い、総排気量が251cc以上になったが登録を変更しなかった場合
→軽二輪フレームに400ccエンジンを搭載した場合や、腰上350ccなどが該当します
以前から横行しており、不正登録が安易に考えられる要因を作った物との考えられます
③何らかの理由で書類が消失した小型二輪車を軽二輪区分で登録した場合
→個人売買などでよく見かけるパターンです
これらは軽二輪と小型二輪で書類の審査方法などが大きく異なる事が要因です
小型二輪は各種登録や改造に関して自動車技術総合機構による審査が行われ
車検時は実車検査が行われるなど、不正な登録を可能な限り排除する努力が行われています
審査の際に使用される資料も自動車製造者発行の物に限られるなど、
自動車登録に精通した方以外では各種改造の申請を行うのは難しいのが実状です
対して軽二輪の場合は実車に関する検査は行われません
登録においては書類上の記載内容と各種石刷り、写真のみで行われます
また資料に関しても自動車製造者以外の資料でも使用が出来、
提出内容と実車に相違が無いかの確認も行われません
本来であれば許される事ではありませんが、これらが不正登録が横行する原因とも言えるのでは無いでしょうか
意図せず不正登録状態に?オーバーサイズピストンは何故なくなったの?
②の改造を加えた登録に関しては、明らかな不正登録の他
意識をせずに不正登録状態となってしまう場合もあります
以前は各種メーカーから交換部品として「オーバーサイズピストン」という物が供給されていました(以下OSピストン)
こちらは純正より僅かに大きいピストンで「+0.25mm、+0.50mm、+1.0mm」などが存在していました
こちらは通常のピストン及びシリンダーが使用限界に達した際、僅かに大きいピストンと交換しシリンダーをボーリングを行う事で車両の継続使用が可能になる部品です
チューニングで言うところのボアアップと同様の行為ですね

写真だけでは良く分かりませんがこちらも
オーバーサイズピストンです
メーカー製の他、社外製のパワーアップパーツとしても多数販売されています
これは確かワイセコ製だった様な
ですがこちらの部品は2000年代中頃、国土交通省等のお達しにより
メーカーによる供給は途絶えてしまいました
理由は使用により車検証記載の排気量と実車の排気量に差異が生じる為とのこと
確かに軽自動車の場合、数ccの排気量の違いで大きく制度が変わってきます
色々ご意見はあるかと思いますが、OSピストンを使用する事で
車検証上の排気量と実車の排気量に相違が生まれる事は事実です
例として250SSマッハ1の場合、純正はボア45.0mmxストローク52.3mmで
総排気量は249.54ccとなります
こちらの車両を当時のメーカー供給最大サイズ、+1.0mmピストンに交換すると
ボア46.0mmxストローク52.3mmで総排気量は260.75ccとなり軽二輪の区分を満たさず本来は小型二輪としての登録となります
メーカー供給部品のよる修理であるにも関わらず、厳密に言うと
不正登録状態となってしまう訳ですね
重ね重ねですが色々ご意見はあるかと思います
結果的に上記の理由によりメーカーからのOSピストン供給は
無くなってしまったのが実状です
書類無し車の軽二輪登録とは
では③はどうなのでしょうか?
こちらは所謂「書類起こし」の代用として行われます
ご存知の通り書類の無い小型二輪(251cc~)の書類再発行は非常に困難です
正攻法で行う場合、前所有者に関する情報と委任は必須となります
対して軽二輪の場合、不正登録を助長を避ける為に詳しい方法は伏せさせて頂きますが
書類の再発行は非常に簡易な方法で可能です
そこに目を付たけグレーな業者の小遣い稼ぎとして利用されています
要は400cc以上の車両を書類を紛失した250cc車両として
再登録を行ってしまう不埒者が後を絶たない訳ですね
実車の状況や小型二輪としての登録歴を調べず、軽二輪として再登録出来る現状は
正直に申し上げて運輸支局側の怠慢と言わざるを得ません
250cc登録の車両を400ccに戻す事は出来るの?
結論から申し上げると現在では非常に困難です
まず過去に400ccとして登録されていた車両が何らかの理由で軽二輪として登録され
改めて400cc登録に戻す場合に関して
こちらは400cc登録を行っていた際の書類(返納証明、自賠責証明)などが必要となります
これらが無い場合は400cc登録時の名義人の情報、譲渡を受けた証明などが必要となります
多くの場合で行われる書類無し車の250cc登録の場合、
これらの情報が不明の為に書類無し車となる事が殆どですのでまず困難です
こちらに加え、車両の年式を証明する資料や原動機に関する資料が必要となります
国内登録歴のある車両はメーカーから製造証明書が出ませんので、こちらも大変難しくなっております
なぜ400cc登録時代の所有者情報が無い250cc車両の400戻しは陸運局が嫌がるのか
例として「Aさん所有のゼファー400(400cc登録)」があったとします
①Aさんはいつの間にか愛車のゼファーを紛失してしまいます
この際、Aさんは盗難届を出さず特に登録に関する手続きもしなかったとします
②その後、こちらのゼファーは色んな持ち主の元を転々とし
オークションで「書類無し・前所有者不明」の部品取車として販売されたとします
売主をBさんとし、ゼファーが元Aさん所有という事を知らない善意の第三者とします
③そのあと販売されていた車両をCさんが購入しました
Cさんも当然、Aさんに関する情報は一切知り得ません
④Cさんは小型二輪の書類再発行は困難で出来たとしても高価だと知っていましたので
軽二輪として登録をしてくれる業者に依頼しました
その際、ゼファーが書類チューンか実際に250ccになっていたかは問いません
⑤後日Cさんはやっぱり正規の400cc登録に戻したくなり
運輸支局に相談に行きました
さて上のお話を見ると車両状況に詳しい方ならすぐに違和感に気付くかと思います
①の段階でAさんはゼファーの永久抹消登録は行っていませんので、陸運局側には
Aさんを名義人としたゼファーの情報が残ります
②の段階で色々な持ち主の元を転々とする間に、Aさんに関する情報は受けがれませんでした
その際、車両に付属していた車検証はいつの間にか無くなっていたとします
無くなった車検証を再発行する権利があるのはAさんか、Aさんから代理を受けた人だけです
③の段階では善意の第三者に車体代金を支払いCさんが車両を譲り受けました
Cさんに違法性はありませんが、書類を再発行する権利もありません
④ここでCさんは手に入れたゼファーを250cc登録します
正規の250cc登録か不正登録かは問いません
登録後、陸運局側のデータとして
「Aさんを所有者とする車検証」
「Cさんを所有者とする軽自動車届出済証」
が存在する形となります
本来であれば最終所有者のAさんからの譲渡が確認できない以上、
軽二輪登録も認めるべきでは無いのですが、現実問題としてこの様な登録が行われている
車両が多数存在してしまっています
⑤この段階でCさんは250cc登録を400ccに戻そうとします
陸運局はここで
・400cc登録時の車検証
または
・Aさんから譲渡を受けた事が確認可能な資料
の提出を求めます
なぜなら上記の資料の提出を求めず、400cc登録戻しを認めた場合
一つの車体番号に異なる人物を所有者とする2枚の車検証が存在する事となるからです
陸運局の判断でAさんの所有を抹消したうえでCさんを所有者とする車検証を発行する事は
財産権の制限となるため、Aさんの同意を得ずに行う事はありません
よって過去に400cc登録をされていた車両が軽二輪として登録され、再び400cc登録に戻すには過去に400cc登録を行っていた際の書類又は所有者情報が必要となる事となります
尚、Aさんが紛失した際に盗難届を提出していた場合は④の軽二輪登録の段階で警察によりAさんに連絡が行われます
Aさんは盗難から2年位内であれば民法第193条によりCさんに対し、所有権の回復を請求出来ます
2年以上経過していた場合はCさんが支払った代価を弁償する事で、所有権の回復を請求する形となります
まとめると軽二輪登録を行っている車両の正規登録には
通常の書類無し車両で再登録する際と同様の書類が必要となるという事になります
冒頭で申し上げた
「元に戻す事も可能ですが当方は詳しくありませんので、陸運局等に聞いて下さい」
は嘘ではありませんが、ほぼほぼ不可能と判断頂いて問題ないかと思います
